学校教育の法化現象
近時、社会全体が法化社会となってきています。この法化社会の動きが、学校・教育現場に押し寄せています。このすくような動きは、「学校教育の法化現象」といわれています。法化社会の中で、企業、特に上場企業のコンプライアンスが重視されてきています。
コンプライアンスについて、企業において重要な条文は会社法会社法362条です。この条文の第4項第6号は、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を規定し、会社に対して経営体制の統制を図ることを義務としています。
具体的に、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」は、法令や倫理規範の遵守を図ろうとするもので、具体的には、会社の経営方針とそれに基づく行動指針などの法令遵守基準の策定、また、コンプライアンス基本方針・関連規程やコンプライアンス強化および内部通報制度などが対象となっています。
スクールコンプライアンス
また、このような会社法におけるコンプライアンスのルールが要請されている流れの中で、学校・教育現場でのコンプライアンスが課題となってきています。この学校・教育現場でのコンプライアンスが、いわゆる「スクールコンプライアンス」と言われているものです。
営利を目的とする企業においてコンプライアンスが重視される現在、公教育を担う学校においては、企業以上に、よりコンプライアンスが重視されなければならないものです。
注:狭い意味での「法化社会」と広い意味での「法化社会」
「法化社会」について、企業活動を中心に定義をすれば、狭い意味では、企業活動に関して、最大限規制緩和がなされ、必要最小限の規制以外は自由とされて、紛争が起これば法律により解決される社会となります(久保利英明弁護士のよる定義を参考にしています)。
これに対して、社会全体を考えて、広い意味で、「法化社会」を定義すれば、社会に生じる様々な問題について、それを法律によって規制したり、処理したりする傾向が増加する社会であり、その結果、法律の適用や裁判制度を利用する範囲が拡大する社会のことです。
注:狭い意味での「コンプライアンス」と広い意味での「コンプライアンス」
狭い意味での「コンプライアンス」(compliance:法令遵守)とは、企業を含む組織が法令、組織内規等の基本的ルールを守って活動することを指しています。
広い意味での「コンプライアンス」は、法令、組織内規等に限らず社会的規範や倫理(モラル、エシックス)を守ることも含むものです。
「企業コンプライアンス」(Corporate Compliance、Regulatory Compliance)や「ビジネスコンプライアンス」とは、コンプライアンスが問題とされる主体が、企業である場合の呼び方です。