アカデミックハラスメントの起こる典型的な人間関係は、教員間および教員・学生等間です。アカデミックハラスメントの分類は、具体的に発生している事案を基にいくつかの分類がなされていますが、体系的な分類の検討はなされていないようです。
このような状況の下ですが、大学等におけるそれらの人間関係のハラスメントとして、特徴的な事項を中心に分類を考えると、以下のように分類することがよいと思われます。
1 修学(学習)又は研究への妨害・侵害
学生等や教員は、良好な環境の下で修学(学習)又は研究をする権利を持っており、これらの権利が侵害される場合が修学(学習)又は研究への妨害・侵害です。
- 教員→学生等(教員・学生等間)
・文献・図書や機器類を使わせない。
・実験機器や試薬などを勝手に廃棄する。
・机を与えず、もしくは机を廊下に出したり、または条件の悪い部屋や他の研究室員とは別の部屋に隔離したりする。
・正当な理由がないのに研究室や資料室への立ち入りを禁止する。
・正当な理由なく研究・教育上の指導を一切しない。
・ 本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマにつき、十分な説明もせず、無理矢理押しつける。
・学会等への参加を正当な理由なく許可しない。
・研究費から支出すべき実験の費用などを不当に学生等に負担させる。
・ 空バイト・空謝金(アルバイトをしたという架空の書類を学生等に作らせ、不正に研究費を引き出すこと)などの金銭的不正行為を強要する。
・ 論文の内容、著者順などについて共著者に説明することなく、また、了承を得ずに投稿する。
・学生等の未公刊論文の内容を指導教員が無断で引用する。
- 教員→教員(教員間)
・研究費の応募申請を妨害する。
・必要な出張届や物品購入を承認しないことで、出張や物品購入を妨害する。
2 修学(学習)または研究に対する不当な評価・処遇
学生等の単位修得や進級・進学、また、教員の昇進や異動は、それぞれの学習活動や研究・教育活動に対する正当な評価に基づいて決定されなければなりません。また、学生等の進学や就職、また、教員の退職や転任においては、自らの選択の自由が尊重されなければなりません。不当な評価や理由によってそれらを妨害し、または将来に関わる選択の自由を認めないことは、修学(学習)または研究に対する不当な評価・処遇としてハラスメントとなります。
- 教員→学生等(教員・学生等間)
・単位の不認定の理由を聞かれてもまったく教えない。
・ 卒業・修了の判定基準を恣意的に変更して故意に留年させる。
・正当な理由なく、就職や他大学の進学に必要な推薦書を一切書かない。
・正当な理由なく、就職活動を禁止する。
・(指導教員を変更したいと申し出た学生等に)「俺の指導が気に入らないなら退学しろ」という。
・指導教員を途中で変更したら自動的に留年させる。
・学生等本人の希望に反する学習・研究計画や研究テーマを押しつける。
- 教員→教員(教員間)
・本人の望まない退職や、他の研究教育組織への不当な異動を強制する。
3 身体的または精神的な侵害(人格権侵害)
身体的に、または精神的に、相手方に恐怖感を与えるような言動はハラスメントとして評価されます。
・正当な理由なく、面談等の直接的なコミュニケーションを拒否する
・ 指導の範囲を超えて、相手の人格を傷つけ、人権を侵害するような言動を行う。
・ 虚偽の噂を流したり、怪文書を配ったりする。
・学生等や他の教員 を無視したり、侮辱的言動をしたりする。
・職務上知り得た他の教員の個人情報を不当に他の教職員に告げて回る。
・プライベートな事柄をしつこく聞く。
アカデミックハラスメントの行為についての参考サイト
- 特定非営利法人アカデミックハラスメントをなくすネットワーク「アカデミックハラスメントとは」(http://www.naah.jp/harassment.html)
- 大阪大学「アカデミックハラスメント及びパワー・ハラスメントに関するガイドライン参考資料」
(http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/power_academic_harassment_OsakaUniv.pdf)