学則・校則の法的問題

校則には合理性が必要である

 学校が校則を制定できる権限を有するか否かについて、また、その権限の根拠は何であるかについては、研究者の間でさまざまな議論がありますが、法令上は、学校教育法の解釈の問題として、懲戒権の存在(学校教育法11条)を根拠に、学校は校則(最狭義の校則)を制定できると考えられ、学校が校則を制定することができる権限を有すること自体には、ほとんど異論はありません。

 そこで、次の問題は、学校の校則制定の権限の範囲がどのようなものであるかの問題です。校則の内容としては、校内生活の規則、校外生活の規則、望ましい生徒像を掲げたうえでの訓示的な規定、校則に違反した場合の懲戒の規定など、さまざまなものが含まれています。そして、裁判においては、公立中学の中学生の男子の髪型について「丸刈・長髪禁止」の校則の有効・無効が争われ、また、公立中学の中学生の外出時の制服着用義務の有効・無効が争われた事件など、いくつもの事件があります。

 校則が争われた事件における裁判所の判決の基本的な理論構成は、学校が校則を制定するにあたり、その校則について、「教育目的」(「在学関係設定の目的」)という目的との間との合目的性(目的関連性)があるか否かが問われます。そして、その内容が「社会通念に照らして合理的」か否かが問われることになっています。

 定められている校則について、教育目的があることは否定されることはないのですが、そもそも、それぞれの学校・学校設置者の教育観が重要となっているところです。例えば、公立学校は、社会の要望や地域の実情などに応じて、教育目的を達成すべき責務を負っており、また、私立学校は、建学の精神に基づく教育方針またそれらに基づく伝統や校風に応じて、教育目的を達成すべき責務を負っているものです。それらを基礎とした教育目的があることは否定されないものです。

そこで、次の問題は、その校則に合目的性があるとして、「社会通念に照らして合理的」か否かの判断です。校則の合理性が問われるケースでは、校則による髪型、服装、校外生活一般についての規定が問題とされることが多いものです。この合理性の問題は、児童・生徒および保護者の価値観、また、社会経済事情・時代背景など、さまざまな要素を考慮したうえで判断しなければならない問題です。

そもそも、それらの校則の事項は、基本的には、児童・生徒の自己決定の領域の問題です(憲法上の権利[憲法13条に基づく幸福追求権など]の一部と評価されうる権利が問題とされることもあります)。しかし、現在の校則には、生徒管理や秩序維持などの視点に重きが置かれすぎているといえます。

この合理性の問題については、児童・生徒の自己決定の領域であることの考慮と生徒管理・秩序維持の要素の考慮のバランスを考えなければならない難しい問題ですが、学校が校則を定める際には、この点が大切なことであると考えられます。

参考文献

船越耿一「校則制定の根拠とその範囲」長崎大学教育学部社会科学論叢45号(1993年2月)50~52頁

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