いじめ問題は、学校において大きな課題です。いじめ問題については、教育的観点から、また、法的観点からいじめを考えることが大切です。
まず、法律上の定義としては、いじめ防止対策推進法2条に定義がなされています。この第2条は、「この法律において『いじめ』とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行 われるものを含む。) であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。」としています。ここでは、いじめを受けている児童・生徒の主観を重視する定義とされています(下線は筆者が追加したもの)。
いじめの要件を整理すると、以下の3要件が充足される場合、「いじめ」となります。
- 児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人間関係にある他の児童等が行うもの
- 心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行 われるものを含む。)
- 当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの
法律上、いじめの定義がなされていますが、実務上は、三類型に分けて考えることができます(山口卓男編著『新しい学校法務の実践と理論』(日本加除出版 2014)83頁以下参照)。この三類型は、いじめについて、法的保護が認められるレベルまでへの段階的な類型(最広義のいじめ)です。
- 子どもが成長する過程で一般的に見られる日常的衝突の場合(例:学校生活において一般的に見られる「けんか」や「からかい」)
- 子ども同士の衝突が、社会化のプロセス(日常的衝突を繰り返しながら、他者との距離感を身につけていく過程)を超えた激しいものとなり、一方的で、教育上看過できないレベルまでエスカレートした場合(「教育課題としてのいじめ」)
- いじめの対象となっている児童・生徒の法的に保護されるべき権利・利益が侵害される程度に至った場合(「法的問題としてのいじめ」)
いじめ防止対策法のいじめの定義は、いじめを受けている児童・生徒の主観を重視するもので、「いじめ」の意味内容(用語の外延)を広く捉えており、その「いじめ」のレベルにより「いじめ」の内容を限定していくと、三類型として捉えることができます。
(参考文献)
山口卓男編著『新しい学校法務の実践と理論』(日本加除出版 2014)83―86頁